ジミ・ヘンドリクス(以下ジミ・ヘン)の4枚組ボックスがいよいよ日本でも発売された。噂では初回限定5000枚生産らしい。デビュー直前の1966年〜1970年に他界するまでの4年間の軌跡を貴重な未発表音源やライブ音源で構成したもの。ビギナーが聴いて楽しめるような「ベスト盤」的な内容ではないので、少なくともジミ・ヘンのオリジナル・アルバムは全部持っていて相当聴きこんでないと、このボックスの真価はわからないと思う。そこまでのファンじゃないけど、ボックスにちょっと興味がある方には、ボックスからの曲を抜粋した1枚モノのタイトルも出てるので、そちらを聴いてみるのもいいかもしれない。
ジミ・ヘン没後30年目にして、ようやくマニア納得のボックスセットがリリースされるまでには本当に紆余曲折があった。1970年にジミ・ヘンが他界してから、実は様々な編集盤がリリースされている。一部のタイトルを除き、コンセプトのよくわからない未発表曲を雑多に並べただけのものや、映画に全然関係ない曲が収録されたサントラ盤、そして超極悪音質のライブ盤などが、そうした編集盤の実態だった。それでも他界直後はジミ・ヘンの楽曲を渇望するマニアにとっては多少の潤いとなっていたんだけど、1975年になってとうとうファンの逆鱗に触れた編集盤がリリースされた。
今回紹介するのはまさにそうした編集盤の中でも最も悪名高き『Midnight Lightning』。このアルバムの前年に発売されて全米4位のセールスとなった『Crash Landing』とセットで批判の対象とされることが多い。何故ファンの逆鱗に触れたかというと、ジミ・ヘンが他界する以前に録りだめしていた未発表の様々な楽曲のマスターテープから、当時バックを務めていたメンバーのパートをすべて消し去り、ジミ・ヘンに縁もゆかりも無いスタジオ・ミュージシャンを適当に集めて、そのパートを差し替えるという暴挙に出たからである。
だけど、そうした経緯でリリースされた『Crash Landing』は前述の通りヒットを記録。で、2匹目のドジョウ狙いでリリースされたのが『Midnight Lightning』なんだけど、死人の墓を暴いて宝物を売りさばく盗賊に近しい行為と、前作以上にオリジナル・レコーディングを改悪した内容にファンの評価も極めて低かった。セールスも当然振るわなかった。
これに懲りて、こうしたインチキなアルバムはしばらくリリースされなかったんだけど、1990年代になってリリースされた『VooDoo Soup』なる編集盤は、先の2枚と同様の暴挙に出た。また差し替えやがったのである。ポリ**ルさん、そんなことしてまでCD売りたかったの?
ジミ・ヘンの実像が商魂逞しいレコード会社によって歪められていくことを危惧した遺族らが『Experience Hendrix』を設立し、すべての音源を管理することになったのが1997年。これ以降はインチキ盤はリリースされず、徹底したリサーチと明快なコンセプトのもとに素晴らしいアルバムがリリースされ続けている。また当時ジミ・ヘンのほとんどのレコーディングにおいてエンジニアを務めたエディ・クレーマーが徹底したリマスタリング作業を行うことで音質も大幅に向上している。そして没後30年目にファン待望のボックスセットのリリースに至るワケである。
『Midnight Lightning』やその他のインチキ盤は1990年初頭まではCDが店頭に並んでいたけど、ほとんどがカタログから消え去ったので、やっとジミ・ヘンも安心して永眠できるだろうね。
収録曲
- TRASHMAN
- MIDNIGHT LIGHTNING
- HEAR MY TRAIN A COMING
- GYPSY BOY (NEW RISING SUN)
- BLUE SUEDE SHOES
- MACHINE GUN
- ONCE I HAD A WOMAN
- BEGININGS