連載「エサ箱日誌」第23回のスタート!
5月某日(その1)
前々回も紹介したけど、元メンバーの坂本龍一氏監修によるYMOのベスト盤『UC YMO』が8月に発売される。タイトルにある「UC」とは「Ultimate Collection」、つまり「究極のベスト」といった意味。
数ヵ月前に告知された時には一体どんな楽曲が収録されるのだろうと色めき立ったわけ。今回Sonyから発売される前に、一時的にYMOのアルバムは東芝EMIから発売されていたことがあって、その時に『YMO GO HOME!』という非常に良くまとまったベスト盤が出ているから、『UC YMO』はどんな差別化要因を含んでいるのかなと。
数週間前に情報が解禁になって『UC YMO』の収録曲が公になったんだけど、おそらく期待していた方のほとんどが「えっ、何これ?」って反応だったのではと思う。おそらく史上最低の内容じゃないかな、これ。レアトラックの魅力にも乏しい。YMO時代からいい意味でファンを裏切ってきた彼らだったけど、今回もそういう事?
とにかくベスト盤だろうと何だろうと、YMO関連商品の購入層の大部分はリアルタイムでYMOを体験した30歳代半ばだと思う。その層に支持されないとセールス的には失敗と思っていい。今回のベスト盤は残念ながら、主要購買層の支持を集めるのは非常に困難だろう。
おそらくSonyの担当者もそうした市場の声をどこかの時点で予想したんだと思う。坂本龍一氏から選曲リストが挙がってきた時点で「あちゃ〜」って感じだったら、話としては最高に盛り上がるんだけどね。
ま、とにかく、ベスト盤単体では主要購買層の支持を得られずに失敗すると踏んで、YMOが1980年のワールドツアーで着用していたステージシャツとバンダナを付けた『UC YMO : PREMIUM』を予約数のみ制作して販売するという暴挙に出た。写真集も付いて2万円。これ買った人、YMOコスプレするのかなー。いや、開封しないだろうね。押入の奥の方にしまっておくんだろうけど、何年かしたらカビてるか、黄ばんでるか、どちらにせよ悲惨だろうね。
で、「Sony、この野郎」って思ったかって? いえいえ全然。Sonyさん、まだ甘い。どんどんやってください。お願いします。3ヵ月後くらいにベスト盤の第2弾を制作して、今度は赤い人民服でも付けて価格10万円くらいで販売して。さらにその3ヵ月後くらいにはライブのベスト盤をシンセサイザー付きで200万円くらいで。
はっきり言って、YMOという名の付いた商品であれば惜しみなく金を出す阿呆がたくさんいます。そういう方々からお金を巻き上げても全然罰が当たりません。肝心の商品の内容を見極めず、YMOという名前に目がくらんだ輩からは、じゃんじゃん金を持っていってください。当のご本人は自分が騙されていることを知らないと思いますが、騙される方が悪いのです。
おそらく予約の状況も上々なのでしょう。今度はYMOのウェブマガジンを有料で提供するとの告知がSonyさんからありました。Sonyさん、YMOでぼろい商売ができることに相当味をしめましたね。いいんです、じゃんじゃん行きましょう。誰もSonyさんを責めませんから。もし文句言があるならお金出さなきゃいいだけですから。だけど、いくらそうやって強がっても、YMO地獄にはまり込んだ阿呆は不安で毎晩眠れない日が続きます。「どうしよう、どうしよう」と強迫観念に苦しめられることになります。
そうなれば、Sonyさん、しめたものですよ。思い切って購読料1万円くらい取りましょうよ。それでも金出す阿呆がたくさんいますから。全然オッケーです。
ボクですか?買いますよ、もちろん。ボクもあなた方のような阿呆と同じく、YMOに人生狂わされた阿呆の一人ですから。シャツもバンダナもウェブマガジンもぜーんぶ買います。いいじゃないですか、誰にも迷惑掛けてないんですし。CDの選曲が悪くったってお構いなしです。どうせ聴きませんし、物欲を満たすだけですから。みなさんもそうでしょ?
『UC YMO : PREMIUM』を買った阿呆同士で、オーナーズクラブを作りましょう。「おお、あなたのバンダナはちょっと印刷のノリが悪いですなあ」とか、「あなたのシャツは縫製が素晴らしいですなあ」とか、虚栄心を満たし合いましょう。音楽なんていまさらどうでもいいんですよ。YMOは物欲を満たす道具にすぎませんから。あほか。買うか、んなもん。
(フィオナ林檎)
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