連載「エサ箱日誌」第38回のスタート!
12月某日
幻と言われた頭脳警察の1stアルバム『頭脳警察1』を解放したレーベル、フライング・パブリッシャーズから、とんでもないアルバムがリリースされた。国家権力と空港建設反対派が激しい闘争を繰り返していた、いわゆる「成田闘争」のまっただ中にあった千葉県成田市三里塚で野外フェス「'71日本幻野祭」が行われたが、その模様を収録したアルバム『幻野』が32年振りに復刻された。
厳密に言うとロックミュージシャンの演奏を抜粋した不完全版が1989年にリリースされたことがあるが、今回は正真正銘の復刻。しかも並行して撮影されたドキュメンタリーフィルムがDVD化されて今回の復刻盤にカップリングされ、映像と音の両面から伝説のフェスを追体験できる新装パッケージでのリリースとなった。
1971年発売のこのアルバム、フェスに出演した頭脳警察、ブルースクリエーション、布谷文夫のDEW、ロストアラーフ、高柳昌行ニューディレクション、落合俊トリオ、そして地元婦人行動隊の盆踊りといったパフォーマンスだけでなく、演奏の合間にハプニング的に起こった論争なども収録されて、ドキュメンタリーとしての要素が非常に強い内容が故に、一部の評論家からは散漫な内容であると批判されてきた。しかも創世記レコードという得体のしれないレーベルが制作してURCレコードが販売したため、流通した枚数は少なかったのではないかと思う。自分自身、現物を見たことは一度はなく、このアルバムは時々中古レコード店のオークションに出品されるようなレア物として珍重されてきた。
今回の復刻は外箱の中に、丁寧に復刻された紙ジャケ仕様によるCD『幻野』と、当時の出演者、制作者等へのインタビューをまとめたブックレットが2冊、そして青池憲司監督による約24分のドキュメンタリーDVDが収められている。このDVDに収録のドキュメンタリーは当時18mmの白黒フィルムで撮影されて自主上映などで公開されていたが、数年前にこのフィルムがビデオ化されて単体でリリースされたことがある。今回はそれをDVD化したものである。
最大の関心はCDだが、音質面では可能な限りのマスタリングによるノイズ消去が行われているものの、マスターテープが行方不明のために当時リリースされたレコードから復刻されている。出演者のインタビューによるとギャラなどは一切支払われていないそうだし、レコードの売り上げが出演者に支払われたとも思えない。こうした点を総合すると、当時このアルバムはゲリラ的に制作されたのではと勘ぐってしまう。
レコードの売り上げがどこに消えたのか、今となってはわからないが、当時の混沌とした状況の一端を伺い知ることができる。そうした究極のアナログな産物を今再びリリースする理由はわかならなくもない。複雑な権利関係の処理もかなり苦労されたであろうし、それに見合った売り上げを記録するとはとても思えないが、デジタル化が進むこのご時世に、アナログ時代の産物をデジタル化して後世に残そうとするスタッフの極めてアナログな熱い意志がビシビシと伝わってくる。なお、都内某レコード店では、当時のレコードについていた帯のミニチュア版を特典としてもらえる。急げ。
収録曲
Disc 1:
- プロローグ
- 演奏1『涙 ラ グリマ』 by 高柳昌行ニュー・ディレクション
- 論争1
- 演奏2『WEEPING LOVE GLASS』-『THE FLEET CIRCUS』 by 落合俊トリオ
- 論争2
- 論争3
- 演奏3『FACE』 by 高木元輝トリオ
- 論争4
- 演奏4『二人のブルース』 by DEW
- 演奏5『夏は終り』 by DEW
- 論争5
Disc 2:
- 演奏6『原爆落し』-『悪い夢』 by ブルース・クリエイション
- 論争6
- 盆踊り『せっせっせ』-『武田節』b y 婦人行動隊
- 演奏7『世界革命戦争宣言』 by 頭脳警察
- 演奏8『銃をとれ』 by 頭脳警察
- 演奏9『セクト ブギウギ』 by 頭脳警察
- 演奏10『銃をとれ(アンコール)』 by 頭脳警察
- 演奏11『叫喚地獄』 by ロスト・アラーフ
DVD:
- ドキュメント 日本幻野祭 三里塚1971
(文=フィオナ林檎)