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[No.0411] 2005/4/13
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POP-SITEゲーム批評
これはゲームではありません。
DS専用『エレクトロプランクトン』




■任天堂■DS■2005年4月7日発売■メディアアート■4,800円(税別)■1人用■★★★★★


ここ1ヵ月ほど私のニンテンドーDSのスロットに刺さりっぱなしだった『メテオス』であるが、このたびついにその座を明け渡すことになった。いやー、もうたまらんっす『エレクトロプランクトン』。いろんな意味で期待していた以上の物件である。

現時点でDSに面白いソフトがなかったわけではない。確かに『きみのためなら死ねる』も『メテオス』も面白かったけど、これらは「DSであることの必然性」、ぶっちゃけて言うと「DSの有り難み」がそれほど強く感じられなかったんである。

しかし『エレクトロプランクトン』は違う。ニンテンドーDSという特殊なハードウェアの有り難みを、これほど感じさせてくれるソフトはなかった。DSのためだけに作られた、まさにネイティブなソフトである。

メディアアーティストである岩井俊雄氏の最新作である『エレクトロプランクトン』は、画面上の「電子プランクトン」に対するプレイヤーの操作(タッチパネル、およびマイクからの音声入力)により、リアルタイムで美しい音楽と映像が生成されてゆく、という作品である。それぞれ別々のアプリケーションとして10種類のプランクトンが存在している。

どのプランクトン(アプリケーション)もまったく違う性質を持っており、本作品をゲームとして見ると「音楽をモチーフにした10種類のミニゲームが収録された作品」ということになるが、わざわざジャンルが「メディアアート」と指定されている通り、本作品はゲームではない。『ビートマニア』や『太鼓の達人』的な音楽エンタテインメント作品とは趣向が違うんである。

私は「シンセサイザー玩具」と呼ぶのが最もしっくり来るのではないかと思った。あくまで玩具なので、厳密な操作は不要であり、適当に画面をタップしたり声を出したりするだけで美しい音楽と映像を堪能できる、というのが本作品のミソである。プレイしてみる前は、もしかしたら音楽版「スクイーク」みたいな、音楽制作の基礎を楽しく啓蒙するようなソフトなのかと勝手に想像していたんだけど、全然そういうものではなく、純粋にグラフィックとサウンドを気持よく楽しむためのソフトである。

シーケンサー的な要素を持つプランクトンもいるにはいるが、そういう「作曲」的な要素は期待しない方がいいと思う。サウンド生成パラメータのグラフィカルなメタファであるプランクトンをでたらめに(あるいは計画的に)操作することで生じる即興的なサウンドを楽しむ、というのが本作品の白眉であろう。なお、操作しなくても勝手にプランクトンたちが動き回って演奏が行われる「オーディエンスモード」も用意されている。

「画面をなぞった軌跡に従って音を鳴らすプランクトン」や「回転数に応じて音が大きくなるプランクトン」から「マイクに向かって喋った声を様々なフィルタリングで返すプランクトン」まで、必要とされる操作や生成されるサウンドの種類もプランクトンごとに多彩である。どのプランクトンも非常に考え抜かれて作られているなあと思った。

グラフィックも本当にすごい。普通のポリゴンやスプライトではなく、「曲線(よく見るとベジェではなく短直線の連続みたいだけど)とグラデーションによる平面オブジェクト」によって描かれるプランクトンたちがスムーズに動くさまは、ベジェ曲線マニアには実にたまらないものがある(そんなマニアいるのか。ってそれは私だが)。DSってもっと非力なのかと思ってたので、このグラフィックがこのフレームレートで実現できているのはちょっと意外だった。色調やフォントなども含めて、本作品のグラフィックはすべてがいい。3Dグラフィックを柱にしたGPU性能のマッチョな進化が続く昨今、本作品の独特な美しいグラフィックは一見の価値ありだと思う。

何ひとつセーブできる項目がない、というのも本当にいい。素晴らしいメロディや音階やハーモニーを発見しても、電源を切ると何も残ってない、というのが実にすがすがしい。セーブできないから、ちょっと遊んですぐに電源を切ってしまっても一向に差し支えないわけである。逆に言えば、セーブを必要とするほど長期に渡るプレイをしなくてもいい、ということでもある。

オーディエンスモードの存在も含めて、本作品は血道を上げて時間をかけて必死にプレイしたり上達したりする類いのゲームとは逆位相に位置する内容となっている。私が歳を取ったせいもあるだろうし、ゲーム以外にすべきことやゲーム以外の面白いことが増えたせいかもしれないが、こういう「やらずに済むゲーム」((c)吉田戦車)が増えることは実にありがたい。あ、これはゲームじゃないんだった。

かつて『オトッキー』や『マリオペイント』や『ポケットカメラ』や『Rez』に熱中したり、フロッピーに入ったジョン前田のインタラクティブ・アートを買ったり、仕事のBGMに「Lexikon-Sonate」を流しっぱなしにしたりしたことのある人なら、本作品は間違いなくツボにはまるはずである。私は岩井さんの(DSでの)次回作がぜひ見てみたいので、本作品がいっぱい売れればいいなあと思っている。

たださ、この作品が世間に認められちゃうと、1990年代後半の「渋谷系ゲームバブル」みたいな、勘違い似非アート作品が連発するようなことになりゃしないかという危惧はあるわけだ。誰の作ったどのゲームとは言わないけど、ものすごいのがいっぱいあったもんな。まあ、DSってプレイステーションと違って(いろんな意味で)敷居が高そうだから、そんなもんがおいそれと発売されることはないだろうと思うんだけどさ。発売されたらそれはそれで面白いんだけど。

(モリサワジュン)

(C)2005 Toshio Iwai/Nintendo

【関連リンク】

●【12%OFF!】DS『ELECTROPLANKTON エレクトロプランクトン』(amazon.co.jp)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007XQ3Z6/popsite-22

●『ELECTROPLANKTON エレクトロプランクトン』公式サイト
http://electroplankton.com/



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