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死なない子犬と過ごす永遠の時間。
ニンテンドーDS『nintendogs』




■任天堂■DS■2005年4月21日発売■コミュニケーション■4,800円(税込)■1〜2人用■★★★★★


相変わらず任天堂は我が道をひた走っているわけである。以前私は「任天堂は、みんなでマラソンをやってる最中に一人だけ競技場を出て卓球を始めてしまった」みたいなことを書いたが、もう「卓球」とかそんなんじゃないね。マラソンでも卓球でもない、何か別の競技を勝手にでっちあげてしまったという感じがする。セパタクローとかさ。いや、別にセパタクローがでっちあげとかそういうわけじゃないんだけど。

で、この『nintendogs』もかなりセパタクロー感あふるる、他に類を見ないソフトである。永遠に成長しない(成犬にならない)子犬を買ってきて、エサをあげたり芸を仕込んだり散歩させたり風呂に入れたりコンテストに出したり……という毎日を延々繰り返す、というのが大まかな内容である。私はまったく試してないのでわからないが、DS本体をスリープさせたまま持ち歩いていると、同じくDSを持っていた人の子犬が遊びに来たりするという機能もあるらしい[※付記1]。なお、最初に選べる子犬の種類の違いでパッケージが3種類用意されている。

まず、子犬の動きとグラフィックが本当にすごい。あざといまでの愛くるしさ全開で、本物みたいな子犬が動く動く。これってモーションキャプチャーでもしたのかね。だとしたら、子犬の身体にあのおばあちゃんの膏薬みたいなのを貼り付けてカメラで撮影したんだろうか。とにかく子犬は卑怯なまでに可愛い。個人的には、どんなに遠くにいても子犬の目に1ドットのハイライトが入るところに、黒澤明のキャッチライトにも通じるこだわりを感じた。

過去に登場したペットゲームは、たいていが動物そのものの表現で失敗して総崩れになっていたが、本作品ではこの子犬の見た目の表現が見事に完成されているおかげで、周りの要素すべてが引き立っている。あまりにも子犬の表現が見事なため、簡単に「自分の飼い犬」として感情移入できてしまうので、ゲーム中に登場する他の人の飼い犬を見ると「やっぱりウチの犬のほうが可愛いな」と絶対に思ってしまう。ゲームのはずなのに普通にそういうことを思わされるのはかなりすごい。

ただ、一連のモーションに揺らぎがなく、例えば「おすわり」を命じるといつも寸分の狂いもなく「おすわりの動作が再生される」感じはちょっとがっかりであった。なおかつ他の種類の犬でも、見た目が全然違う犬なのにまったく同じ「おすわり」の動作をするのである(全部のモーションを見たわけじゃないんだけど)。技術的にしょうがないのかもしれないけど、ちょっと味気ない感じがしなくもない。

DSのマイクに話しかけることで、当たり前みたいに子犬とコミュニケーションが取れる、というのが本当にすごい。音声コマンドがプリセットされているわけではなく、ユーザーが「お手」とか「おまわり」といった語句をマイクに向かって話すと、子犬がその発声とそれに対応した芸を記憶するのである。もちろん名前を呼べば駆け寄ってきたり吠えたりしてもくれる。

そして、子犬が近くにいる時は、タッチパネルで触ったり握手したりすることができる。鼻を触ればくしゃみもする。もしかしたらDSのタッチパネルはこのためにあったのではないかと思えるほど、この仕様はしっくり来ている。この2点(音声認識、タッチパネル)により、過去のペットゲームはすべて遺物と化したね。もはや本作品に対抗できるのはAIBOぐらいのものであろう。

私はずいぶん前に発売された『Pet in TV -with my dear dog-』という全く同一のコンセプトのソフト(1999年発売、屋内で犬を飼育する)を所有しているが、ペットとの交流に十字キーとボタンしか使えないというのは、今にしてみれば非常にもどかしいものであった。例えば犬をなでたい時は、「犬をなでる」コマンドを選んで、次に「頭」「身体」「足」とかいった部位を選ぶ、というものすごい仕様なのである。本当にじれったい。

さらに、ある程度しつけが出来たら、いくつかのコンテスト(投げたフリスビーをキャッチさせるやつとか、仕込んだ芸を披露するやつとか)に出場させることができる。ここで入賞すればお金がもらえるので、各種グッズや新たな子犬や設備投資(部屋の拡張など)に充てることができる。コンテストの上位入賞を目指してがんばって遊んでもいいが、がんばらなくても特に支障があるわけではない。

そして、『nintendogs』のもう一つの特徴は、「子犬のまま成長しない」ということである。それは同時に「死なない」ということも意味する。前述の『Pet in TV』にも「ペットの死」が要素として含まれていたけど、『nintendogs』の子犬たちは(多分)絶対に死なない。病気という概念自体が存在しないし、おそらくエサも水もやらなくても死なないはずである。

私は、子供の頃に飼い犬の死を目の当たりにした。谷口ジローのコミック「犬を飼う」は、子犬を飼い始めてから成長して死ぬまでの様子を克明に綴った感動的な作品で、これを読むと「犬を飼っている長い期間には、誰しも様々な悲喜こもごもがあるんだなあ」と共感せずにはいられないのであるが、『nintendogs』はあえてそういった「時間」をばっさり捨ててしまい、微分された(日常の)瞬間が永遠に続くようになっているわけである。

この「永遠に続く日常の瞬間」が商品として成立してるってことが、私にはすごいなと思える。長い人生の時間を描かなくても、あるいは冒険とか格闘とかカーレースのような非日常を持ち出さずとも、日常はゲームたりえるのである。私はハレに属するコンテストなどにはほとんど出ず、毎日ずーっと散歩したり芸を教えたりボールで遊んだりすることを繰り返しているが、それだけで十分楽しい。

ただ、永遠に<夏休み>が続くゲーム『どうぶつの森』なんかもそうだけど、この「永遠に続く日常の瞬間」というのは強烈なモラトリアムであろう。『どうぶつの森』はこれ自体で完結したゲームだから別にいいんだけど、『nintendogs』は「犬」という存在で現実と繋がっているわけである。説明書にもそのへんのことは触れられているけど、分別のつかない子供がこれで遊んだりするのはちょっとなあ、と私は思った。

ところで、犬が散歩中にウンコしてそのまま立ち去るのが、私はものすごく気になる。路面はアスファルトだから、もう町中ウンコだらけであろう。スコップでウンコをすくう絵ぐらい入れといても良かったんじゃないのかなあ[※付記2]。しかしウンコするしぐさも可愛いんだこれが。

※付記1(2005/4/29):その後、すれ違い通信に初挑戦で初成功しました。29日の19時頃、大江戸線の新宿駅近辺で私にテンガロンハットをくれたあなた、本当にありがとうございました。そして、しょうもないゴミ(「だれかの写真」)を差し上げたご無礼をおゆるしください。[もどる]

※付記2(2005/4/27):説明書によると、ウンコにタッチすれば片付けられるとのことです。すみませんでした。これからはちゃんと片付けて帰ります。[もどる]

(モリサワジュン)

(C)2005 Nintendo

【関連リンク】

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007XQ49Q

●任天堂『nintendogs』公式サイト
http://www.nintendo.co.jp/ds/adgj/index.html



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