私が『ワンダと巨像』の2周目をだらだらと遊んでいる間に、今年も年末商戦の季節がやってきた。今年は、12月10日についに発売となる最新ゲーム機「Xbox 360」と、同月8日に発売されるニンテンドーDS用のネットワーク対戦対応ソフト『マリオカートDS』、この両者の戦いが見どころとなりそうである。
とはいえ、Xbox 360はまだまだ様子見に徹した方が良さそうに思えるし、家では小学生の甥っ子たちが「あと1ヵ月でマリオカートの新しいやつが出るね!」と目を輝かせて浮き浮きしているので、我が家の年末商戦は任天堂の圧勝に終わりそうだ。つい先日も、年末に備えてニンテンドーDSをもう一台買い足してしまった。子供たちはDS用の『ボンバーマン』で毎日ものすごい盛り上がり状態。これで『マリオカートDS』やら『大乱闘スマッシュブラザーズDS』(←出るかどうか知らないけど)なんて出ちゃったら、うちの子供たちは勉強なんてしてる暇あるんだろうか。心配である。って心配なら買わなきゃいいのに。こういうのを「御為ごかし」って言うのでしょうか。違うか。
そんな盛り上がりの傍らでひっそりと発売されたのが『ビューティフル ジョー スクラッチ!』である。このゲームは、2003年6月にゲームキューブで発売された『Viewtiful Joe』と、その続編である『ビューティフル ジョー 2 ブラックフィルムの謎』(ゲームキューブ/PS2で発売)に続く新作である(が、今回はおそらく「パート3」ではなく、携帯機用の番外編・移植的な位置づけと思われる)。
1作目の『Viewtiful Joe』が出た時は、そのあまりのメガドライブっぽさ(=高難度/古典的/やり込み要素満載/マニアックなモチーフ、などの要素を併せ持つ、1980年代のアクションゲーム的な内容)に驚愕し、ここで紹介させて頂いたぐらい大好きなゲームであった。
今回の『スクラッチ!』にも発売前から非常に期待してはいたものの、一抹の不安があった。その理由は、「ニンテンドーDSのグラフィック面でのスペックが、前作までのプラットフォームであるゲームキューブやPS2よりも劣っている」からであった。このシリーズは、その全編が凝りに凝った3Dグラフィックと派手なエフェクトを施され、なおかつ高いフレームレートで描かれており、そのグラフィックも手の込んだアメコミ調のシェーディングが採用されているのである。
ゲームキューブやPS2ならともかく、旧世代機であるニンテンドウ64と同等と言われるニンテンドーDSのグラフィック性能で、この絵は一体どうなるのか。もしかしたら3Dグラフィックをやめてレンダリング済みの絵をたくさん出すつもりなんじゃないのか。発売まで私の不安が尽きる事はなく、眠れぬ日々が続いた。うそ。
が、結局その不安はただの杞憂であった。確かにグラフィックのレベルは多少落ちてはいるものの、ゲームそのものには何ら影響を与えるものではなかった。むしろ、私のような「低スペック移植ファン」にとっては、このグラフィックの落差はちょっといい具合に楽しいものですらあったのである。
このグラフィックのレベルダウンとは、例えば「ポリゴン数の低下」や「フレームレートの低下」が挙げられる。画面のエフェクトも多少地味になったように思える。このゲームに限らないけど「画面が小さくてドットが荒い」というのもあるかもしれない。
しかし、この「レベルダウン」がまたいいんだ。私はこのレベルダウンに、すがすがしい懐かしさを感じた。「レベルダウン」と言うと聞こえが悪いが、決してマイナスではないと私は思う。最近はどのゲーム機を見てもスペックが豪勢かつ過剰で、こういうレベルダウンはまずありえないのであるが、20年ぐらい前まではもう日常茶飯事だったのである。特にアーケードゲームからファミコン、PCエンジン、メガドライブなどへの移植の際、この「レベルダウン」はまず避けられない事であった。
かつてのファミコンとアーケード基板ほどのスペック差がニンテンドーDSとゲームキューブの間にあるわけではないとはいえ、本作には多少なりとも「レベルダウン」が存在するわけであるが、ゲームキューブ版の本質(攻撃の爽快感、メタ映画構造、パズル要素、アメコミ調のグラフィックなど)をばっちり捉えつつ、スペック差を埋める工夫(ポリゴン数の削減、タッチパネルや2画面のフル活用など)を施すことにより、ゲームキューブ版に劣らない充実した楽しい内容となっているのである。
なおかつ、私はこういう「高→低」移植が大好きなので、例えばこの作品の場合だと、背景の自動車がちょっとマッチ箱チックなポリゴン数で描かれていたり、フレームレートがちょっと低めだったり、解像度の兼ね合いでゲームキューブ版より文字が大きめだったりドットが荒かったりするのを見るのが楽しい。本来なら器に収まらないブツをどうにかして収めるための、制作者側の創意工夫や苦心惨憺を、私は勝手に想像して楽しむのである。ゲーム機のスペックのインフレ化が常態化して久しい昨今、こういう楽しみ方が出来る『ビューティフル ジョー スクラッチ!』は非常に貴重な作品であると思う。
というわけで、ゲームキューブ版に負けない面白さと爽快感が味わえて、DSならではのフィーチャーも楽しめて、しかもどこでも携帯して遊べて、その上「高→低」移植の醍醐味も味わえる、この『ビューティフル ジョー スクラッチ!』はまさに「買い」のゲームである。少なくとも、現時点でのニンテンドーDSのアクションゲームとしては最高傑作なのではなかろうか。DSユーザーなら必携である。
最後に余談であるが、ファミコン時代の「レベルダウン」について書かせて頂く。1980年代、アーケードやパソコンなどからファミコン(など家庭用ハード)に移植されて「レベルダウン」した作品の中にも、秀作と駄作があった。その別れ目は、1) 「元となる高スペックなゲームの<本質>を掴んでいるかどうか」2)「スペックの差を埋めるための工夫がなされているかどうか」であったと私は思う。わかる人だけ共感して頂きたいのであるが、ファミコンでの具体例を記憶に頼って挙げてみたい。秀作:『ゼビウス』『アフターバーナー』『ファンタジーゾーン』『ドルアーガの塔』『グラディウスII』『ローリングサンダー』『魂斗羅』『ソロモンの鍵』。駄作:『スーパーゼビウス』『怒 -IKARI-』『ドラゴンスピリット』『アルゴスの戦士』『スペースハリアー』『イメージファイト』『ボールブレイザー』『エイリアンシンドローム』『ファンタジーゾーン2』『ジャイロダイン』『タイガーヘリ』。やっぱり駄作の方が多かったです。以上。
(モリサワジュン)