いきなりこんな書き出しもどうかと思うが、こんなもの売ってもらったら本当に困る。この師走の忙しい時期に、これ買った人はもう仕事も勉強も手につく道理がないだろう。『テトリス』は共産圏が資本主義諸国に放った「労働効率破壊兵器」であったという説があるが、任天堂はこんな危険なものを海外のみならず日本国内にまで流通させるとは一体どういう了見なのか。任天堂もしくは京都府発のテロか。だとすると京都府民は誰一人このゲームで遊んでないのか。特に、社内のネットワークに無線LANを導入している職場は、DSの持ち込みを禁止した方がいいと思う。あと、子供に買ってやろうと思っている親御さんはまず自分で遊んでみて、その危なさを確かめてから購入に踏み切るべきであろう。
ニンテンドーDSが登場してから誰もが待っていた『マリオカートDS』が、ついに登場となった。このゲームが最も危険であると言える所以は、何と言っても「ニンテンドーWi-Fiコネクション」によるインターネットを介した完全無料4人同時対戦であろう。ドメスティックな制限がある『おいでよ どうぶつの森』と違って、『マリオカートDS』では日本国内だけでなく世界中のプレイヤーと対戦することができる(日本国内だけ、という選択肢も用意されている)。ワイヤレスで、しかも無料で、メンツさえ揃えばいつでもどこでも対戦が可能なのである。自宅のトイレでアメリカ人やカナダ人やフランス人(手描きの国旗で判断)と対戦しながら、当時はモデム標準装備が「高い志」と評価されながら、結局ネットワーク対戦が根付くことはなかったドリームキャストのことをしみじみ思い出した。結局一度も対戦しなかっけなあ……。
このゲームが他のネットワーク対戦ゲームに比べて遊びやすい理由の一つは、「意思表示を行う手段が無い」という点ではないかと思う。チャットはおろか、プリセットされた文言や顔アイコンの送受信などを行うことすらできない。せいぜい逆走して何らかの意思を示せるぐらい(時々やってる人がいる)。勝った人に「うまいっすね!」とか言う必要も無いし、負けた人に「いやいやまぐれですよ」とか言う必要も無い。ドラゴンボールじゃないが、「戦うことだけがコミュニケーション」なのである。
プレイヤーがネット越しに実在する人間であることを確認できるのは、プレイヤー名と「エンブレム」(手描きで編集できる32x32ドットのアイコン。車体にも表示される)だけであるが、これがあると無いとではずいぶん違う。ソフトが日本版・北米版・欧米版のどれなのかも、画面に表示される色でわかるようになっている。
どの国の人も、予想していたよりもみんなマナーがいい。もともとプレイ中に悪質な行為ができる内容じゃないし、そもそも「アイテムでプレイヤーを邪魔する」という要素がゲームシステムの一部に組み込まれており、よっぽどのことをされても大して腹が立たないというゲームだからだろうか。負けた悔しさで回線を切断しちゃうような人もまずいない。
それと、このゲームは極めればみんな同じような走り方になるんだろうなと思っていたが、まったくそんなことはなかった。冷静なライン取りを徹底する人や、直線を蛇行してまでミニターボを使う人、わざとゆっくり走って最終周の巻き返しを狙う人など、実に様々な遊び方があるもんだなと感心する。たとえばスターを取って無敵になっても、ぶつかって来る人と来ない人がいる。たいていぶつかって来るけど。いずれにせよ、CPU対戦が味気ないものに思えることだけは間違いない。人間性や性格というのは、ただゲームをやっていても出るもんだなあと思った。
今回は、スタンドアロンな『マリオカート』シリーズの最新作としてもかなりバランスがいい。スーパーファミコン版の初代『スーパーマリオカート』には及ばないものの、前作『マリオカート ダブルダッシュ!!』に比べると、アイテムの無意味な乱発で足を引っ張り合うような局面はあまり起こらなくなったし、重量級と軽量級の存在意義のバランスもかなりまともになったと思う(でもやっぱり軽量級の方が有利)。凶悪な攻撃アイテムを同時に2つ持てる『ダブルダッシュ!!』では、先頭を走ってるだけでそれはもう様々なひどい目に遭って悲しい気持ちになったわけだが(後ろを走っているほうがより強力なアイテムを入手できる)、今回はかなり控えめ。特に対戦時は、相手を攻撃するアイテムが登場する確率が多少低く設定されているような気がする。
グラフィック性能はニンテンドウ64に近いと言われているDSであるが、本作品のグラフィックは64版『マリオカート64』よりもかなり向上している。64版との最大の違いは、各キャラクターがスプライトでなくポリゴンになったという事である。喜怒哀楽の表情や動作もちゃんと描かれるようになったし、カートの種類も一気に増えた。なおかつ、64版でも不可能だった60フレーム/秒の画面書き換えをも実現している。相変わらず木や一部の障害物などはスプライトだけど、かえってその方がゲームっぽくていいと思った。さすがにゲームキューブ版には及ばないものの、どのコースもとても綺麗。もちろんスーパーファミコンやアドバンス版と違って、平面でなく立体的なコース構造になっており、分岐も存在する。なおかつコースはちゃんと遠くまで描かれるので、「いきなりカーブが描画されてあわててハンドルを切る」とか「遠景を見ているとどんどん木が生えてくる」的なことは皆無である。
まさに隙なし、鉄壁の完成度。正直ほとんど不満はないが、強いて言えばネット越しの観戦モードが欲しかった。上級者が対戦しているところを見てテクニックを勉強できたら良かったのにと思う。あと、リプレイのカメラをいじれないのもちょっと残念。あまりカメラがロングにならないような気がするが、あれはやっぱりハードの限界なんだろうか。
一人プレイ時やDSワイヤレス対戦時の各種モードも非常に充実している。スーファミ版、GBA版、64版、ゲームキューブ版のコースが、まるでベスト盤的なチョイスで収録されているのも素晴らしい。いまだに初代『スーパーマリオカート』にこだわっている人も、そろそろこっちに乗り換えてもいいんじゃなかろうか。もしネット対戦に対応していないとしてもシリーズ最高傑作と言えそうな出来である。
今回ついにネットワークにつながったことによって、ジグソーパズルの最後の一片がハマったような感じすらする。私もヘタクソだけどちょくちょくネットワーク対戦をやっている。『ゼビウス』のソルバルウ(白い戦闘機)のエンブレムを見つけたらあんまりいじめないで下さいね。
私がこれを書いている傍らで、うちの小学生の甥っ子たちが『マリオカートDS』を初プレイ中。まだ一人プレイだというのに異様に盛り上がっている。これでネットワーク対戦をやらせてしまったら、人の道を踏み外すほどハマってしまわないかどうか心配である。これを読んでいるお父様お母様、いざという時はアクセスポイントのWEPパスワードを変えちゃいましょう。
(モリサワジュン)