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[No.0449] 2006/1/4
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POP-SITEゲーム批評
日本人だけに許された脳力鍛錬アイテム
『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』



■任天堂■DS■2005年12月29日発売■脳活性化ソフト■2,800円(税込)■1〜16人用■★★★★★

噂には聞いていたが、まさか本当にニンテンドーDSが慢性の品不足状態に陥っているとは思わなかった。今回の『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』があまりに面白く、私の母にも試しに遊ばせてみたところこれがえらく好評だったので、我が家で4台目となるDSを両親のボケ防止のために購入すべく、近所の玩具店や量販店に行ってみたがことごとく品切れ。ネットを探してもやっぱりどこも品切れ。売ってるサイトをようやく見つけたと思ったら売価23,000円だって(定価は15,000円)。買うかそんなもん。皆さんもうっかり買わないように。

しかし見事にどこに行っても売ってないんだDS。実際、トイザらスのDS売り場では品切れを目の当たりにしてがっかりしている親子連れが本当に大勢いた。この罪深い状況を作り出した一因となっているのが今回の『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』であろう。テレビでは松嶋菜々子様が毎日仏頂面で購買を煽りまくっているくせにどこに行っても本体が入手できないという、ある意味ファミコンミニを彷彿とさせる状況となっている。売る物が無いならテレビCMなんてやめて謝罪広告に差し替えればいいのに。「任天堂から 大切なお知らせと お願いです」で始めて、もちろんBGMとかは無しだ。何なら「ご使用になっていない DSがございましたら お引き取りに うかがいます」とか告知しちゃったらどうか。

前回の『脳を鍛える大人のDSトレーニング』は非常にいいソフトだった。陰山メソッドの一つとして有名になった「100ます計算」をグレードアップした「計算100」をはじめとする全9種類のトレーニングや各種のクイズを毎日繰り返し、その成果を本作品ならではの「脳年齢チェック」を使って計り、再びトレーニングを繰り返して脳年齢をチェックして……を繰り返して脳を鍛える、というのがこのソフトの使い方である。トレーニングはどれもシンプルながら非常によく出来ており、確かに「トレーニングすると頭がすっきりする」ような気がするのである。私は脳科学については何一つ知らないが、もし万が一この気分がプラシーボ効果によるものであるとしても、それはそれでいいじゃんと私は思う。極端な話、「すっきりしたような気がする」だけでも私は十分有り難い。

私は、この『脳を鍛える』シリーズがヒットした理由の一因として、以下の2点の相乗効果が挙げられると考えている

1. カレンダーを使って「毎日継続して遊ばせる」構造

    特に『nintendogs』以降の任天堂製のDSソフトには、内蔵時計と連携して「毎日遊ぶ」「毎日電源を入れる」意義を持たせているものが多い。『nintendogs』はまさに「犬を飼育する」ソフトであり、(犬は死なないとはいえ)毎日世話をしなければいけない。『おいでよ どうぶつの森』は、ニンテンドウ64版(カセット内に時計が入っていた)の頃からそうだったが「夏には花火大会がある」「年末年始には年越しイベントがある」「冬にしか釣れない魚がある」といった具合に、1年を通して遊び続ける動機となる仕掛けがいくつも用意されていた。

    この『脳を鍛える』シリーズでは、それがさらに徹底されている。起動するとその月のカレンダーが出てきて、トレーニングを行った日にはスタンプが押されていく。毎日皆勤でこのスタンプがズラーっと並ぶ様は壮観である。逆に皆勤を守れずさぼってしまった時は、ポリゴン顔の川島先生に「昨日は顔を見せませんでしたね」などと嫌味を言われる始末。

    また、トレーニングを習慣づけるための<エサ>として、「最初は15種中3種類のトレーニングしか使えないが、スタンプが増えるとトレーニングも増えて行く」という仕組みが取り入れられている。特に今回の『もっと脳を鍛える』では、まともにやると全部のトレーニングを出すまでに1ヵ月近くかかるので、その頃には惰性がついて毎日欠かさずトレーニングを続けている可能性も高いと私は思う。

    なお、この手の「毎日継続して遊ばせる」構造というのは、下手をすると「中古屋に売られないための御為ごかし」であったりすることも少なくなかったわけだが、このシリーズにそういうあざとさがあまり感じられないのは、「毎日継続して脳を鍛えるためのツール」という体裁が徹底されているせいだと思う。

2. 遊ぶ目的がゲームの「外側」にある

    前述の『nintendogs』『おいでよ どうぶつの森』といった作品におけるプレイヤーのモチベーションは、ゲームの「内側」にあった。『nintendogs』では「犬」だし、『おいでよ どうぶつの森』では「どうぶつたちとのコミュニケーションと雑貨集め」である。「犬」に興味が失せたり、「どうぶつたち」との関わりに飽きたり「雑貨」を集め尽くしたりした時点で、ゲームの持つ価値は大きく下がるはずである。

    それに対して、この『脳を鍛える』シリーズにおいて、プレイヤーのモチベーションはゲームの「外側」にある。本シリーズの場合はプレイヤー自身の「脳力の開発」である。かつて、プレイヤーのモチベーションをゲームの「外側」に移そうとして失敗した作品はけっこうあったように思う。代表例としての『マインドシーカー』(ナムコ・1989年。超能力を開発するゲーム)、『けいさんゲームさんすう1年』(東京書籍・1986年)あたりを挙げたい。逆に、例えば将棋ゲームやオセロゲームの秀作は、「遊ぶことで本当に将棋が上達する」のであれば、プレイヤーのモチベーションを「外側」に向けることもできそうである。

    私は、「外側」には「内側」よりも強力なモチベーションを生み出す求心力が働くことが多いと思う。しかし、プレイヤーのモチベーションを「外側」に持って行くのは難しかった。それは、「ゲームの制作者はゲームの外で起きることまでは関知できない」からだと思う。本当に超能力が使えるようになるのか、本当にさんすうの成績が上がるのか、本当にオセロが上手くなるのか、本当に車の運転がうまくなるのか、それを保証するのは色んな意味で大変である。

    その点、この『脳を鍛える』シリーズでは、前頭前野に関する川島教授の研究成果を後ろ盾に様々なトレーニングが用意され、数値化された「脳年齢」の視認によって「本当に脳が鍛えられる」(ような気がする)ように出来ている。その結果として、プレイヤーのモチベーションは「ゲームそのもの」を媒介して「自分の脳の開発」に注がれることになる。純粋にゲームとして見れば本シリーズより面白い物はいくらでもあるが、それは大した問題ではないわけである。

    さらに、DSのインターフェース(手書き入力、音声入力)も、「手で文字を書くと脳に良い」「声を出して言葉を話すと脳に良い」という言説を具現化する上で非常に有利であり、脳の鍛錬における説得力の補強における重要なファクターとなっている。

さらに、このシリーズのヒットの一因には世間一般の「物語からの脱落」と「アテンション・スパンの低下」という負の要素の裏返しが挙げられると私は考えているが、これについてはいずれ稿を改めさせて頂きたい。

今回の『もっと脳を鍛える』も前回と全く同様の構成となっているが、収録されているトレーニングと脳年齢チェックが全て新作で、しかも9種類だったトレーニング数も一気に増えて15種類となった。しかも、今回は手書きによる文字認識(漢字・数字・記号など3000文字)や、音声合成・音声認識を使ったトレーニングが多数収録されており、前回と比べても非常にやりごたえのある内容となっている。特に文字入力時の認識率の高さとスピードの速さは驚異的。一概には比較できないものの、うちにあるタブレットPCよりも圧倒的に軽快かつ的確に認識してくれる。

なお、もし前作を持っていなければ、2作あわせて購入されることをおすすめしたい。今回は入っていない100ます計算のタイムアタックができて、しかも4人分のプロファイルが作れるというだけでも2,800円は安い。

以前ここで、『マリオカートDS』は労働効率を低下させるから非常に危ないと書いた。できれば日本人は『マリオカートDS』で遊ばず、どんどん海外に輸出して諸外国の労働力を削ぐのが国策として正しいと思う。が、今回の『もっと脳を鍛える』は逆。もし本当に脳が鍛えられるんであれば輸出など一切せず、日本人だけのたしなみにしたほうがいい。まあそもそも日本人にしかできないトレーニングばっかりなんだけど。

(モリサワジュン)


東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング

任天堂/Nintendo DS
価格:¥2,464 (税込)
OFF:¥336 (12%)
東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング

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価格:¥2,464 (税込)
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任天堂『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』製品情報

http://www.nintendo.co.jp/ds/anmj/

任天堂『脳を鍛える大人のDSトレーニング』製品情報

http://www.nintendo.co.jp/ds/andj/

Touch-DS.jp - もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング!

http://touch-ds.jp/mfs/mottotraining/



(C)Nintendo 2005




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