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[No.0455] 2006/2/15
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POP-SITEゲーム批評
豪勢なおかずと貧相なごはん。
DS版『メトロイドプライム ピンボール』



■任天堂/FUSE GAMES■DS■2006年1月19日発売■SFピンボールアクション■4,800円(税込)■DS振動カートリッジ同梱■1〜8人用■★★★

現在、ビデオゲーム版のピンボール(以下「ピンボールゲーム」)には、「リアル系」と「非リアル系」があると思う。大雑把に言えば、実在する本物のピンボールに近ければ近いほど善しとされるのが「リアル系」で、逆に(本物のピンボールから遠ざかるとしても)ビデオゲームならではのギミックを積極的に取り入れているのが「非リアル系」である。

私は、本物のピンボールをあまりやった事がなく、せいぜい子供のときにデパートの屋上で時々遊んだ程度である。だから、リアル系のピンボールゲームがどれほどリアルに本物をシミュレートしていようと私には判断が付かないし、従ってリアル系よりも非リアル系のピンボールゲームの方が好きである。

私は、1980年代前半にプレイした『トリックボーイ』(1984年、PC-6001)と『David's Midnight Magic』(1985年、PC-6001mk2SR)で、ピンボールゲームの面白さを知った。これらの地味なピンボールゲームには、リアルさも派手なエフェクトも欠けていたが、ピンボールの面白さだけは本物のピンボールからしっかりと引き継がれているように思った。

私にとって「ピンボールの面白さ」とは

 ハイスコアを狙う

という一点に尽きる。必死でフリッパーを操ってボールを落とさないように耐えながらターゲットに当てて得点を稼いで役を作ってボーナスの倍率を増やし、最後にボールをロストしてドカンとボーナスを精算する、というセックスみたいなカタルシスが、ピンポールの醍醐味だと思うのである。

唐突だが、これをピンボールゲームにおける「ごはん」とする。

そして、「おかず」に当たるのが「(ビデオゲームならではの)付加価値」である。例えば非リアル系なら「ボスステージ」「派手な爆発」「ボールが宙に浮く」「盤面にクリーチャーがうごめく」「ポケモンを集める」「複数の台」であるし、リアル系なら「本物のピンボールを忠実にシミュレート」であったりする。

つまり、ピンボールゲームはリアル系だろうと非リアル系だろうと「ごはん」(ピンボールの面白さの核)と「おかず」(付加価値)で成り立っている、ということである。

これはピンボールゲームに限らず、ビデオゲーム全般に言える事であるが、重要なのは

 おいしいごはんは飽きないが、おかずはいくらおいしくても飽きる

ということである。

ごはん(主食)とおかず(副食)は協調関係にあり、互いに相乗効果をもたらす。

 a) 「ごはんとおかずがどちらもおいしいので素晴らしい食事になる」
 b) 「おかずが貧相でも、ごはんがおいしければどうにか食べられる」
 c) 「ごはんがまずいのに、おかずばかりが豪華なので食傷する」
 d) 「ごはんもおかずもまずくて食えたもんじゃない」

前述の『トリックボーイ』と『David's Midnight Magic』はb) にあたる。貧弱なハードウェアしか存在しなかった時代のソフトウェアだから付加価値は低かったが、ピンボールの面白さが非常にうまく表現されており、ゲームバランスも良かった。

その後、ゲーム機の性能が向上し、「おかず」が豪勢でおいしくなって行くわけだが、私は『トリックボーイ』と『David's Midnight Magic』の、過度な装飾のないシンプルさや簡潔さが好きだったので、あまりにもグラフィックが美しかったりゲームの仕組みが複雑だったりするピンボールゲームにはあまり食指を動かされなかった。なおかつ「リアル系」のピンボールゲームにも興味がなかった。

私が最も好きなピンボールゲームは、PCエンジンの『デビルクラッシュ』(1990年)である。上記の分類ではもちろんa) 。この『デビルクラッシュ』が、私にとっては最も「ごはん」と「おかず」のバランスが取れていた。あんまり大した事ができないPCエンジンというハードウェアを極限まで生かしたグラフィックとサウンドは必要十分であったし、「ごはん」に当たる部分も過剰すぎずわかりやすく、ボス戦などの追加要素もゲームの進行と目的の邪魔にならない程度になっていると思った。

で、今回の『メトロイドプライム ピンボール』であるが、私がプレイして感じた限りでは、モロに

 c) 「ごはんがまずいのに、おかずばかりが豪華なので食傷する」

であった。同社の前作『スーパーマリオボール』にも、私は同じ印象を持っている。

とにかくミニゲームだのボスだのアイテムだのと、『メトロイド』シリーズの世界観を表現するためにご都合主義的に入れたような、あんまりゲームの本質とは関係ない要素がてんこ盛りで辟易させられる。

また、「ごはん」の部分も正直あんまり良い出来とは思えなかった。とにかくボールが速すぎてあのDSの小さい画面と操作系では非常にプレイが困難だった。そして、ある条件を満たすとサムス(ボール)がいきなり人型に変形してシューティングシーンになったりするし、その上ボールに耐久力が設定されており、攻撃を受けすぎるとロスト扱いになるのである。こういうフィーチャーで喜ぶ人っているんだろうか? 白いごはんが良かったのにチャーハンになってた、みたいな感じがする。

また、前作『スーパーマリオボール』と同じく、今回も複数の台が存在しており、そのぶん一台ごとの密度が低くなっているに思える。私は、ピンボールを定義する要素のひとつに「一つの台を延々深く攻略する」という、繰り返しとマンネリズムの肯定があると思うので、このゲームの「複数存在する台をクリアする」という構造は、ピンボールとしてどうよ、と思うのである。

そもそも、元ネタである『メトロイド』とピンボールゲームは、相性が悪かったのではないだろうか。『メトロイド』シリーズには、世界観に根ざした「意味」や「物語」があり、それは確かに疎かにはできないが、ピンポールにおいて「意味」や「物語」が優先されてはいけないと思う。「ハイスコアを狙う」という(無意味な)大目的の前には、すべての要素(物語、ボス戦、アイテム、ミニゲーム……)は小目的でなけれはならない、と私は思う。

ハイスコア狙いだけじゃ飽きるから、モチベーションを維持するためにボス戦やミニゲームがある、というのならわかる。前述の『デビルクラッシュ』や、名作『ポケモンピンボール』(1999年、GB)、『カービィのピンボール』(1993年、GB)もそうだった。主食と副食の関係、というのはそういうことである。

これを作った方は、正直言ってピンボールの事をよく知らないか、もしくはピンボールで遊びすぎてピンボールの面白さに飽きてしまったかのどちらかではないかと思っていたのであるが、このインタビューを読んで納得した。この作品の制作者は、本物のピンボールをコレクションするほどのピンボール好きだそうである。あくまで私の想像であるが、おそらくこの方は、普通なら飽きないはずの「ごはん」の味に飽きてしまい、さらに「おかず」を豪勢にするだけでは飽き足らず、「ごはん」をチャーハンにするという禁断の手を使ってしまったのではないだろうか。

私が欲しかったピンボール版『メトロイド』は、台はせいぜい2種類程度(1種類でいいけど)、変形などは一切不要で、ボールはもちろん無敵、無駄な謎解きやアイテムなど一切ないシンプルなものである。世界観や物語の表現も、『アキラ サイコボール』のように、ゲーム性にはあまり深入りしない程度にして欲しい。さらに言うとグラフィックや世界観は『メトロイドプライム』でなく初代『メトロイド』のものを使って欲しかった。そうすれば、プリレンダーなどの無理な手間をかけなくてもDSの性能で十分に再現できるし、ドット絵によるグラフィックを『テトリスDS』のようにメタレベルで動かしたりすることも可能だったはずである。

このゲームで私が最も気になったのは、「任天堂が作ったのではない」感がにじみ出ているところだ。このゲームをプレイすると、小学館の「小学×年生」などに掲載されている「ドラえもん」(亡くなった藤本先生ではない方が執筆しており、オリジナルに似ているけど微妙に違う)を読んだ時のような感じがする。むしろ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』のような、「元ネタのキャラクタをこんなふうにして遊んじゃないました」的な姿勢の方がまだ良かった。

ふと思い出したが、もうかれこれ10年以上前、川崎の武蔵中原で働いていた時、「焼きそばチャーハン弁当」という、まるでこの『メトロイドプライム ピンボール』みたいなものを昼休みに毎日食べていた事がある。まだあんのかなー、「チャイニーズキッチン ニイハオ」。

最後に、私だけだろうか? 任天堂における『メトロイド』シリーズの扱いがぞんざいであると感じているのは。もし仮に『ゼルダの伝説』がピンボールになったら(ないけど)、こんな作品になっただろうか。ピンボール版『ゼルダの伝説』……やっぱりボールは「でんぐり返しし続けるリンク」か。絶対つまんないな。出たら買っちゃうだろうけど。

(モリサワジュン)


任天堂『メトロイドプライム ピンボール』製品情報

http://www.nintendo.co.jp/ds/ap2j/index.html



(C)Nintendo 2006




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