『監修 日本常識力検定協会 いまさら人には聞けない 大人の常識力トレーニングDS』……大衆を啓蒙するシリーズの最新作。「脳年齢」「英語」に続いて今回のテーマは「常識力」。次々に出題される常識問題を解く事で、プレイヤーの常識力を判定し、鍛えることができる。問題数はおよそ2000問。
日本人は、と日本人に限る必要もないとは思うが、少なくとも日本人は自分の性質や属性を(できれば数値化・記号化して)他の誰かに断定して欲しくて仕方がない民族だと私は思う。
「世間体」なんて単語がピンで用意されてるぐらいだし、日本人は特にそういうコンプレックスが強いんじゃないだろうか。自分のパラメータは自分以外の人間と比べて高いのか低いのか、右なのか左なのか、みたいな事を知りたくてウズウズしてるのではないか。古くは偏差値や知能指数、そして血液型や占星術による性格判断や占い。最近は「SかMか」なんていう本当にどうでもよい事が宴会の話のネタになっていることと思う。知らないけど。
そして、何と言っても「脳年齢」である。これまでは漠然と「最近物忘れがひどくなった」とか「俺って記憶力わりといい方」といった判断材料しかなかった自分の脳みそのパフォーマンスが、ニンテンドーDSさえあれば簡単に測れるようになった。自分の脳がどんだけのものなのかは誰でも知りたいだろうし、学校における偏差値と違ってあくまで対象は「脳」だから、別に就学年齢の人じゃなくてもすべての人が当事者となりうる。任天堂もどえらい飯のタネを見つけたもんである。
その任天堂が次に目を付けたのが「常識力」であった。今回の『監修 日本常識力検定協会 いまさら人には聞けない 大人の常識力トレーニングDS』は、およそ2000問が用意されているという常識クイズを解いていく事で、プレイした人の「常識力指数」を診断してくれるという内容である。「常識」に「力」を付けて「常識力」とし、「体力」とか「学力」「精神力」といった能力と同列に扱って欲しいというのは何となく無理があるような気もするが、日本に生活する我々社会人にとって、自分に常識があるかないかという事は、ある意味において死活問題ですらあるのは事実。任天堂はまたも太い飯のタネを見つけたと言えるだろう。最初に見つけたのは日本常識力検定協会なんだけど。
本作品のフォーマットは、毎日トレーニングする習慣を付けるために様々な工夫が施されていた『脳を鍛える大人のDSトレーニング』と非常によく似ており、『脳トレ』経験者なら実にあっさりと馴染む事ができると思われる。カレンダーが用意されており、毎日決まった数の常識クイズを解く事で「常識力」を判定したり鍛えたりする事ができる。トレーニングを進めていくと徐々に新しいフィーチャーが追加されていくのも『脳トレ』と共通している。
四択クイズや図版をタッチするクイズ、漢字を書くクイズ、複数の選択肢を線で結ぶクイズなど、DSのタッチパネルを生かした多彩な種類のクイズが用意されており、トレーニングが単調に感じられることはない。
本作品では、常識を「礼儀」「知恵」「社会」「決まり」「教養」という5ジャンルに分類しており、クイズを解くと「あなたの苦手ジャンルは××と診断されました」といった具合に、自分がどのジャンルの常識を苦手としているかをご親切に教えてくれる。××にどのジャンルを当てはめても、「あなたは常識が足りません」と直言された時のような不快な感じがする所から察して、このジャンル分けは非常に的を射ているような気がする。ちなみに私は「教養」が足りないそうである。大きなお世話であろう。自分で買っといて何だけど。
本作品が『脳トレ』と決定的に違うのは、Wi-Fiコネクションによって自分の常識力指数を送信し、全国平均と比較したりする事ができるという点である。これにより、「自分の常識力が何点なのか」だけでなく「世間様と比べて自分の常識力はどうなのか」という事が簡単にわかるようになった。脳年齢と違って、常識というものは公的な社会性と切り離せないものであり、この機能は非常に理にかなっていると思う。企業が社員教育向けに導入しても良さそうな気がする。
クイズの内容は見事に「常識」で統一され、「うんちく」にならないレベルのものが揃っている。例えば豚の全身図が出てきて「バラと言えばどの部位?」みたいな問題はあるが、「東京Xの交配種は、北京黒豚、イギリス系黒豚、あと一つは?」みたいな問題は(おそらく)ない。ただ、そこまで厳選したせいなのかも知れないが、問題数は2000とちょっと少なめ。任天堂の『伝説のクイズ王決定戦』が8000問、問題数が少ないと言われた『クイズ殿様の野望』(PCエンジン版、1992年)でさえ3000問である。あくまで常識力を鍛えるためのソフトであるとは言え、クイズゲームとして見た場合はちょっと物足りないかも知れない。
とはいえ、本作品の「常識力判定&育成ソフト」としての実力はかなりしっかりしていると思われる。これまでは他人に指摘してもらうまで気づかないことがほとんどだった「自分の常識の無さ」であるが、本作品なら身もふたもないぐらい簡単かつ的確に知る事ができると思う。私も長年生きてきて、様々なジャンルのうんちくを幅広く得てきたが、本作品で診断された私の常識力指数は、うちの家族の中で最下位であった。うんちくはうんちくであって常識にあらず。勉強になりました。
(モリサワジュン)